よくある質問

よくある質問

年をとれば誰でも認知症になるのですか?

認知症は本来の能力が後天的に衰えた状態であり、病的な状態、すなわち病気です。ですから、加齢により誰でも認知症になる訳ではなく、年をとっても年齢相応の能力であれば認知症ではありません。ただ、加齢は認知症の最も大きなリスク要因となりますので、加齢とともに認知症になるリスクが増えるのは事実です。75歳を過ぎると、このリスクは飛躍的に高まります。

物忘れがあると認知症になりますか?

物忘れは専門用語の記憶障害に相当しますが、加齢による記憶障害にも認知症による記憶障害にも使われます。また、認知症の認知機能障害は記憶障害だけではなく、見当識障害、計算障害、遂行機能障害などを含んでいますので、記憶障害と認知症も同じではありません。記憶障害がみられても、障害が認知機能全体に及んでいなければ、認知症とは呼びません。

加齢による物忘れと認知症の物忘れはどこが違いますか?

記憶は、物事を覚えて、保って、思い出すことから成り立っています。加齢により誰にでもみられるのは、新しい物事を覚えることや、保っていた記憶を思い出すのが苦手になることです。一方、認知症では、覚えた記憶を保つことが困難となり、とくに最近の記憶が保てなくなることを、近時記憶障害と呼びます。近時記憶障害は、加齢による物忘れでは、基本的にみられません。

認知症とアルツハイマー病は同じですか?

認知症は病気ですが病気の名前ではなく、原因によって、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症などいろいろな病気を含んでいます。アルツハイマー病はアルツハイマー型認知症のことであり、認知症の原因となる病気の一つを指しています。ですが、最も多い認知症ですので、一般に認知症として思い浮かぶのはアルツハイマー型認知症であろうと思います。

認知症になると興奮や徘徊がみられますか?

私がアルツハイマー型認知症の初期と診断結果を伝えますと、家族から「これから怒りっぽくなって興奮したり、無断で外に出て徘徊したりするのですか?」とよく聞かれます。興奮や徘徊は認知症の周辺症状と呼ばれますが、これらがみられるか否かは認知症のタイプや時期、環境によって異なりますし、個人によっても異なります。ですので、家族には今のところ心配はないが、もしみられた場合はそのときに対応法を考えましょうと話します。

軽度認知障害は初期の認知症のことをいうのですか?

軽度認知障害 (MCI)とは、認知症になる前の前駆状態のことを指しますので、認知症とはいえず、初期の認知症とは異なります。認知症では日常生活動作に支障が生じますが、軽度認知障害では支障はありません。軽度認知障害から認知症になるのは半分くらいという報告もありますが、軽度認知障害が正確に診断できていれば、必ずいずれかのタイプの認知症に進行すると考えられ、この時期からの予防治療が望ましいと考えられます。

うつ病と認知症はどのように鑑別しますか?

初老期・老年期に発症するうつ病は、認知症と区別するのがしばしば困難で、うつ病で物忘れや判断力の低下した状態を仮性認知症と呼ぶことがあります。うつ病と認知症とでは症状の出方に違いがあり、例えば、うつ病では症状の始まった時期がはっきりしていますが、認知症では徐々に始まり後になって気づかれます。また、うつ病では忘れっぽいことを自ら訴えますが、認知症では取り繕う傾向があります。うつ病は、抗うつ薬や精神療法で改善しますが、認知症は進行することから、この鑑別は重要です。ただし、初老期・老年期に発症したうつ病が、やがてアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症に進展する可能性は、うつ病のない場合よりずっと高くなりますので、うつ病がその時点で改善しても、その後の経過を見ていくことが必要です。

認知症の薬で認知症をどこまで直せますか?

現在用いられている認知症の薬(抗認知症薬)は、認知症そのものを直す根本治療薬ではなく、認知機能障害の進行を抑制することを目的とした薬です。ですので、障害が軽微な認知症の初期、できればそれ以前の軽度認知障害 (MCI)の段階から用いて、できる限り日常生活に支障のない状態を保つことを目指します。現在、世界中でアミロイド免疫療法をはじめとする根本治療の臨床研究(治験を含めた)が試みられていますが、今のところ満足できる成果をあげていません。

認知症が治らないなら、専門医にかからなくともよいのではないですか?

認知症にはいろいろなタイプがあります。また、うつ病の仮性認知症のように、認知症と紛らわしいが治る病気もあります。まず、認知症であるか否か、どのタイプの認知症であるかを明らかにして、認知症の進行を遅らせる治療を行います。さらに、より早期であれば、それだけ進行を遅らせる可能性が高まります。また、認知症がやがて進行するとしても、本人と家族がよりよい生活を送るために、専門医での相談と治療は大きな意味をもっています。

認知症の診断は本人や家族にどう伝えるのですか?

認知症の病名告知については、専門医でも見解が異なっています。私は診察や検査の結果、認知症の鑑別診断がついた時点で、診断の根拠、病気の時期、病気の特徴、治療法などとともに、診断名を伝えます。ただし、診断名は家族には必ず伝えますが、本人には受け入れができるかを判断した上で伝えるようにしています。軽度認知障害の場合は、今後の本人の生き方にも関係しますので原則として伝えますが、これからの生活に希望がもてるように一緒に予防治療をしていきましょうと話します。