認知症の定義
認知症とは、「認知機能が、後天的な脳の器質的障害によって持続性に低下し、日常生活や社会生活に支障を来した状態」とされています。つまり、単に記憶力や判断力が低下しただけではなく、それによって日常生活に支障がでている場合を認知症といいます。
認知症とは、「認知機能が、後天的な脳の器質的障害によって持続性に低下し、日常生活や社会生活に支障を来した状態」とされています。つまり、単に記憶力や判断力が低下しただけではなく、それによって日常生活に支障がでている場合を認知症といいます。
認知症の症状は、大きく中核症状と周辺症状に分けられます。中核症状とは、原因疾患により直接的に生ずるもので、これを認知機能障害と呼びます。認知機能障害には、記憶障害、見当識障害、注意・計算力低下、遂行機能障害、失語・失行・失認などが含まれています。
また、周辺症状とは、原因疾患、生活環境、身体疾患などの影響により間接的に生ずるものであり、認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)とも呼ばれています。
認知機能障害の中でも気づかれやすい症状です。
一般には、健忘あるいはもの忘れのことを指しますが、同義語ではありません。加齢により誰にでもみられる生理的なもの忘れと、認知症の始まりとなる病的なもの忘れを混同しないようにしましょう。記憶を、覚える、保つ、思い出すに分けますと、生理的なもの忘れでは、新しいことを覚えづらくなったり、その場で思い出せないことはありますが、覚えたことを保てなくなることはありません。記憶を保てなくなることは、病的なもの忘れに特有のものです。
とくに最近の出来事が覚えられなくなることを近時記憶障害と呼び、アルツハイマー型認知症など多くの認知症で、早くからみられる症状です。近時記憶障害は進行し、やがては学校時代の記憶など遠隔記憶にも障害がみられるようになります。
主要なものとして、時間、場所、人物の見当識障害がみられます。時間の見当識障害は、日付や曜日、月、年号などが判らなくなるものです。場所の見当識障害は、今いる場所がどこであるのかが判らなくなるものです。人物の見当識障害では、同伴者が娘さんであることも判らなくなります。
認知症の進行に従って、時間、場所、人物の見当識の順で障害されます。時間の見当識障害は近時記憶障害の進行に伴ってみられますが、人物の見当識障害は高度の認知症でみられます。
うっかりミスが増えたり、探し物が増えたりするのは、近時記憶障害のみでなく注意力の低下によっています。一方、計算は認知症が始まっても足し算や引き算など簡単なものはできますが、進行してくるとできなくなります。買い物で計算ができず、財布が小銭で一杯になることがみられます。
物事の段取りが悪くなり、一つの作業でも次に何をしたら良いかが判らなくなります。家事の中でも、料理がうまくできないことで最初に気づかれます。また、複数の作業を同時に進めることができなくなるのは、遂行機能障害や注意力の低下と関係しています。
失語は、言語の障害であり、運動失語と感覚失語があります。
運動失語は発語に障害のあるもので、健忘失語では、名前が出ないためにアレソレなど代名詞が増え、やがては会話が成り立たなくなります。感覚失語は、相手の言葉の意味が判らなくなります。失行は、行為の障害であり、ハサミや箸などが使えなくなる、洋服をうまく着られなくなります。
失認は、認知の障害であり、目の前の事物が何であるのかが判らなくなります。
形や大きさを正しく認識できず、字が拙劣になり、図形を模写できなくなります。
空間における自分の位置が判らず、トイレがどちらにあるのか判らない、椅子に座る時に端に腰かけたりします。
現実ではないことを誤って思い込むことで、被害妄想は他人が自分に嫌がらせをしている、嫉妬妄想は夫が浮気をしているというものです。もの取られ妄想は、自分の金銭や所有物が他人に取られるというもので、アルツハイマー型認知症では初期からみられます。
幻聴は誰かが自分の悪口を言っている、幻臭は嫌な臭いがする、体感幻覚は身体に異常な感覚があるというものです。居ないはずの人や小動物が見える幻視は、レビー小体型認知症の特徴です。
不安感や落ち着きのなさは、抑うつや幻覚、妄想に伴ってみられることがあります。夕方になると原因なく不安になることを、夕暮れ症候群と呼ぶことがあります。
抑うつは、認知症の初期にしばしばみられます。うつ病から後に認知症に移行することも多いので、注意が必要です。
意欲や自発性が低下し、これまでやっていた趣味や家事をやらなくなります。認知症の初期からみられる症状です。
興奮に伴って暴言、暴行がみられることがあり、介護困難の一番の原因となります。
外出すると戻れず、保護されることになり、介護負担の原因となる症状です。
弄便などがこれに当たります。
不要なものを集め、しまいこむ行為を言います。
タンスから着物の出し入れを繰り返すなど、目的のある行為の形だけが残ったものを言います。
せん妄は、BPSDには含まれませんが、重要な周辺症状です。
意識障害による精神症状であり、注意の集中・維持が困難で思考が混乱し、しばしば錯覚・幻覚を伴います。また、記憶欠損、見当識障害、言語障害などの認知機能障害がみられます。
多くは活動性が亢進しますが、時には不活発となります。高齢者に多くみられ、心理・社会的ストレス、睡眠障害、身体疾患、薬物などが原因となります。夜間にみられるものを夜間せん妄と呼ぶことがあります。せん妄は、数分の短いものから数日に及ぶ長いものまであります。
認知症との違いは、長いものでも一過性であり、やがて意識は正常に戻るのが原則です。ただし、せん妄は認知症に伴って周辺症状として現れることが多く、その鑑別は必ずしも容易ではありません。