軽度認知障害は進行すると認知症に進行する可能性が高く、認知症の前駆状態とみなされます。
【図6】
アルツハイマー型認知症に進行する
軽度認知障害の脳FDG PET
認知機能の一部が低下し、例えば近時記憶障害がみられるが、いまだ他の認知機能は保たれ、結果として日常生活動作に支障が生じていない状態を軽度認知障害 (MCI)と呼びます。軽度認知障害は進行すると認知症に進行する可能性が高く、認知症の前駆状態とみなされます。
一方、軽度認知障害は必ずしも認知症に進むとは限らず、進行するのは半分程度とする意見もあります。しかし、ここでいう軽度認知障害は大まかな概念であり、うつ病の仮性認知症や薬物による意識障害を含んでいる可能性があります。軽度認知障害は、放置すれば将来認知症に進行する状態として厳密に定義する必要があります。
軽度認知障害は、将来アルツハイマー型認知症に進行するもの、レビー小体型認知症に進行するものなど、異なるものを含んでいます。詳細な神経心理検査や脳FDG PETなどの画像検査を行うと、軽度認知障害の段階で将来どのような認知症に進行するかが明らかになります。将来アルツハイマー型認知症に進行するものは、健忘で気づかれることが多く、神経心理検査で近時記憶障害が明らかとなりますが、それ以外の認知機能は保たれています。
【図7】
レビー小体型認知症に進行する
軽度認知障害の脳FDG PET
脳FDG PETでは、既に後部帯状回の糖代謝の低下がみられます(図6)。一方、将来レビー小体型認知症に進行するものは、しばしばレム睡眠行動障害で気づかれ、神経心理検査では近時記憶障害は軽度であり、注意障害や視空間障害がみられることがあります。脳FDG PETでは、既に後頭葉視覚野に糖代謝低下がみられます(図7)。
現在、軽度認知障害の段階からChEIsなどの抗認知症薬を予防的に投与することにより、認知症への進行を遅らせることが期待されています。また、アミロイド免疫療法など開発中の治療薬も、軽度認知障害の段階で行う治験が試みられています。この時点で、適切な予防的治療をすることには大きな意味があり、抗認知症薬による薬物療法の他、患者が将来に希望を失わずに生活できるように支持的に行う精神療法も必要となります。